1速で待つか、Nで待つか?
赤信号で止まったときに、みなさんはどうやって待っていますか?
1速でクラッチレバーを握ったまま待つ?
それとも
ニュートラルにして左手を休ませる?
短時間で信号が「青」に変わることがわかっている場合(歩行者信号が点滅しているとか、交差する側の信号が黄色になったとか)は「1速のまま」待つこともありますが………しばらく「赤」が続く見込みなら「ニュートラル」に入れて待つことをオススメします。
なにより「左手」が楽ですし、両手が空くので上半身を起こして「ストレッチ」したりできるからです。クラッチ機構そのものの摩耗を抑えられることも見逃せません。
実は、1速に入れたままクラッチを切って待っていると、クラッチハウジングの溝にフリクションディスクの爪が小刻みに打ち付けられて、ハウジングが「段付き摩耗」してしまう恐れがあるんです。段付き摩耗が進むとクラッチが切れにくくなってしまいます。往年のDUCATIの乾式クラッチ(現行モデルは湿式)は、この症状が顕著でした。
ただし、ニュートラルに入れたくても「入らない」ということが、ときどき起こります。
原因は各速ギヤに駆動力を伝えるかどうかを決めている ドグ(ドッグ)という凸凹部分が、うまくかみ合わなかったり、抜けなかったりすること。そんなわけで、ニュートラルに入らないときの対策を、順を追って説明していきましょう。
完全停止してから「N」に入れる場合
1速のままクラッチレバーを握って完全停止した状態で「ニュートラルに入らない」場合は、以下の3つの方法のいずれかを試してみてください。
1:軽くスロットルをあおってから(おおむね3000rpm程度までブンとエンジンを吹かしてから)シフトペダルを「N」にかき上げる。
2:シフトペダルに上向きの力を軽く掛けつつ、半クラッチで 10~30cmくらい前進する。
3:クラッチレバーを握ったまま、足の力でバイクを10~30cmくらい前進させてから、シフトペダルを「N」にかき上げる。上り坂だったら、ブレーキを緩めて後進してもOK。
僕は基本的に「2」か「3」の方法を選んでいます。静かですし、燃料を無駄遣いせずに済みますからね。
いずれの方法でも、どうしてもニュートラルに入らなかったら……
キルスイッチでエンジンを停止(メインスイッチで止めてもいいですが、右手をハンドルから離す必要があるので、右親指1本で ON / OFF できるキルスイッチを推奨)
↓
そして、クラッチレバーを離してから、シフトペダルを「N」にかき上げる。もし入りにくかったら、バイクを数cm前に動かしながらシフトペダルを「N」にかき上げる。
こうしてエンジンを止めてしまえば、「さっきまでの苦労は何だったの?」というくらい簡単にニュートラルに入るはずです。クラッチレバーを離してからペダルを操作したほうが、確実にシフトできることも覚えておいてください。
「N」に入らないことが頻発するなら
もし「ニュートラルに入らない」現象が頻発するようなら、次の2つの可能性があります。
◆クラッチのフリクションディスクが摩耗したり、クラッチハウジングが段付き摩耗したり、クラッチワイヤーが伸びたりして、クラッチがきちんと切れなくなっている。
→対策:クラッチワイヤーの遊びを詰める(ワイヤー式の場合)。それでも頻発するようならクラッチをオーバーホールする。
◆エンジンオイルが摩耗している。
→対策:エンジンオイルを交換する。総走行距離が数万kmのバイク、炎天下の渋滞路を走る機会が多いバイクは、耐久レース対応とか空冷エンジン対応と書かれたオイル銘柄を選んだり、オイル粘度を1ランク硬めにしたりすると、シフトタッチが滑らかになります(例:メーカー推奨粘度が10W-40だったら、10W-50にするなど)
完全停止する前に!
ミッションの構造上、バイクが完全に 停止する前 にニュートラルに入れてしまうのが、いちばん簡単&確実な方法になります。
2本あるミッション軸のうちの1本はクランクシャフト、もう1本はチェーンを通じて後輪につながっているので……後輪が回転している間ならドグの凸凹が動きやすくて……「鉢合わせして入らない」とか「くっついちゃって抜けない」ということが起こらないためです。
つまり、停車しようと思った位置の「数十cm手前」でニュートラルに入れてから停止する。この習慣をつけるだけで、ニュートラル問題から解放されることでしょう。
新車の慣らし中でニュートラルが出にくいときにも、この方法が特効薬になるはずです。
老婆心ながら付け加えておくと、赤信号で自分が先頭に止まっていて、後続車がいないときには……近付いてくるクルマに追突されないように、バックミラーをちょこちょこ確認しておくこと!
もし速度を落とさずに近付いてくるクルマがあったら、1速にシフトして「逃げるが勝ち」です。僕はこうして命拾いしたことが2回あります。
安全&快適なツーリングを楽しみたかったら「疲れないこと」がいちばん重要ですから……今回のコツを身に付けて、豊かなバイクライフをお楽しみくださいませ♪
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