ターンとリーンとリスクホメオスタシス

市街地を安全に駆け抜けるために欠かせないのが、曲がり方使い分けること。

さっそく解説ムービーをご覧ください。


以下は、お話している内容を「文字」にしたものです。


先日、見通しのいい交差点で信号待ちをしていたら……シューッと気持ちよさそうに右折してきたバイクと、急いで横断歩道を渡ろうとした自転車が危うくぶつかりそうになって……肝を冷やしました。

ヒヤリハット

ライダーには見えにくい角度から自転車がやってきたので、気が付くのが遅れたんだと思います。

こんなヒヤリハットを避けるために、みなさんは

「曲がり方」を使い分けていますか?

実は、バイクの曲がり方には、大きく分けると2種類があって……「意識してこの2つを使い分けたほうが、安全に気持ちよく走れる」というのが今日のテーマです。

曲がり方・その1「リーン」

Lean(リーン)

曲がり方・その1は「リーン」です。

バイクらしい曲がり方」と聞いたときに思い浮かべる曲がり方ですね。
車体をバンクさせて、遠心力を「お尻」に感じながら、気持ちよく駆け抜けていく。

冒頭でお話した、危うくぶつかりそうになったライダーさんも、このパターンでした。

ただし、車体が傾いていると

強くブレーキを掛けたり、
急に何かを避けたりするのが難しくなります。

想定外の出来事が起こったときに、対処しにくいわけですね。

だから「リーン」を楽しむのは「郊外の道」……自転車や歩行者がいなくて、路面も整っているところだけにしておいてください。

曲がり方・その2「ターン」

Turn(ターン)

曲がり方・その2は「ターン」です。

車体を寝かそうとするのではなく、セルフステアを活かすことでクルリと向きを変える曲がり方です。

セルフステアというのは、車体を傾けると傾けたほうにハンドルが切れてくる特性のことで、自転車でも簡単に実験できます。

市街地の曲がり角や交差点はすべて、この「ターン」を基本にしてほしいんです。

この曲がり方なら車体が少ししか傾きませんから、見えていないところから突然、歩行者や自転車が現れてもブレーキをしっかり掛けられます。

急停止してもバランスを崩しにくいので、立ちゴケの心配もありません。

クルマのエアコンから垂れる「水」に注意!

よく見ると、一般公道にはいろんな「落とし穴」があります。

  • つぶれた空き缶が転がっていたとか
  • ダンプが「」を撒いていったとか
  • 海産物を運んでいるトラックが「」をこぼしていったとか
  • ビニール袋が飛んできたとか
  • 赤信号で止まっていたクルマの下に「水たまり」ができていたとか

水たまりの原因は、クルマのエアコンです。
夏の晴れた日は、特に水たまりが多くなるので、注意してください。

しかも、横断歩道や停止線、路面標識(矢印や数字など)の上に水が落ちていると、なかなか気が付きません。

気持ちよくリーンしてきて「濡れた白線」にのると、ツルッとタイヤが滑りますから、用心してくださいね。

つまり

晴れていても、見通しがよくても、
市街地はやっぱり「ターン」が基本

これが、安全に安心してツーリングを楽しむコツだと思います。

いちばん危険な曲がり方とは?

実は、「初めての路上教習」という安全運転レッスンをしていると、受講してくださった方の2割くらいがやる「危険な曲がり方」があるので、みなさんにもお伝えしておきます。

どんなときに起こるかというと
幹線道路から、少し細めの路地に「左折」するときです。

どんな曲がり方かというと
ウインカーを出して左側に寄っていた状態から

突然、車体を大きく側に振り出し

パタンと車体を寝かす曲がり方です。

「右振り→パタンと寝かす」のは厳禁!

もし、後続車があったら、右側に大きく振り出した時点で「追突」される危険性があります。

後続車のドライバーは、バイクがウインカーを出して左に寄った時点で「右側を抜けていこう」と考えます。まさかバイクが車体を振り出してくるとは、夢にも思っていません。

なにの、出てくるんですから、とっさに急ブレーキをかけたり、右側にハンドルを切ったりして、周りのクルマとぶつかってしまう恐れが出てきます。

こうして右側に車体を振り出す癖があるライダーさんは、ターンリーン違いがわかっていません。そもそもバイクは「リーンしないと曲がれない」と思い込んでいる方も多いんです。

本来なら

1:ウインカーを出して左に寄り、そのまま進路を維持して、十分にスピードを落とします。スピードを落とすほどコンパクトに曲がれるので、しっかり減速してください。

2:続いて、行きたいほうに「おへそ」を向けるようなイメージで、緩やかにバイクを傾けます。

3:すると、自動的にハンドルが切れて、車体が起きたまま(わずかに傾く程度で)クルリと左折できます。

こうした流れで左折すれば、後続車に追突される危険性もありません。

サンデードライバーの中にも、クルマをいったん右側に振り出してから左折する人がいるので、左折車の右側を抜けようとするときには「十分な空間」を確保し、いつでもブレーキを掛けられるように準備しておいてください。

安全に見えるところほど用心を

最後に、リスクホメオスタシスというお話をしておきたいと思います。

簡単に言うと

安全そうに思えるところほど、リスクを冒しやすい

という性質が、人間にはあるということです。

安全に見えるところほど、用心して!

たとえば、見通しのいい広い交差点だと、ついついスピードを落とさずに「リーン」を楽しんでしまうとか、安全性が高いウエアに身を包むほど「もう少しコーナーを攻め込んでみよう」と冒険してしまうとか。

誰でも、思い当たりますよね。

というわけで、安全そうなところほど油断禁物! これが、末永く安全で楽しいバイクライフを送る秘訣です。

賢人の格言

市街地では「ターン」が基本!

安全に見えるところほど、着実な走りを!


今回の記事は『週刊 BIKE賢人』からの転載です。

このように「バイクライフの百科事典」をコンセプトに 幅広く情報発信しているだけではなく、読者限定サービス「手ぶらでリゾートツーリング」と滞在型ツーリング施設「ライダー長屋」(仮称)の実現を目指しているので、ぜひ ぜひ ご協力をお願い致します m(__)m

詳細は こちら をご参照ください。




2 件のコメント

  • コーサク より:

    考え方はなんとなく理解出来ますが、バイクはリーンして初めてセルフステアが効き向きを変えると考えており、全てが一連の動作の中にあるためリーンとターンを分ける事には無理がある様に思います。
    イメージ的には、公道ではサーキットの様な効率の良いコーナリングを目指すのでは無く、白バイの様なしっかり減速し安全確認した上で初めてリーンを開始し手早く曲がる、というニュアンスだとしっくりきます。

    • ご指摘いただき、ありがとうございます。

      「車体が傾くことで セルフステアが働き(自動的にハンドルが切れて) バイクが向きを変える」という原理は いつでもどこでも働きますが

      本動画でテーマにしている「速度20km/h程度までの 街中の曲がり角」では、ライダーの意識の持ち方(操作の仕方)によって「バンク角・通過速度・走行ライン」が変わってきます。

      その違いを「ターン」と「リーン」と表現したのですが、それぞれの定義があいまいだったために、真意が伝わらなかったようです。失礼いたしました m(__)m

      ———————————————

      たとえば、同じバイクで同じ曲がり角を曲がったとしても

      スッと車体を寝かせて
      →そのまま自然とバンク角を深めていき
      →スロットル開けて、遠心力を感じながらコーナーを立ち上がっていく場合
      ……バンク角は20~30度前後・速度は30km/h以上に達し、走行ラインは緩やかな弧を描くと思います。

      こうした曲がり方を、本動画では「リーン」と呼んでいます。

      一方で、
      スッと車体を寝かせたら
      →バンク角を5~15度程度にとどめ、それ以上寝かせないようにすると
      →セルフステアで大きくハンドルが切れて、クルリと向きが変わりますから
      →そこからスロットルを開けて直線的に増速していく場合
      ……バンク角は最大15度程度・速度は20km/h以内・走行ラインは「屈曲ポイント」が明確な折れ線のような形になると思います。

      こうした曲がり方を、本動画では「ターン」と呼んでいます。

      ご自身のバイクで実験してみると、街中に多い20km/h以下の曲がり角では、「車体を起こしておこう」と思うか思わないかで、上記の「リーン的」になったり「ターン的」になったりすることを、実感していただけると思います。

      想定外の「飛び出し」や「落下物」などに遭遇したときに、速度が低く、車体が起きているほど回避動作(急停止や進路変更)を取りやすくなりますから、街中の曲がり角ではやっぱり「ターン的な曲がり方」がいいのでは? それが本動画の主旨でした。

      ———————————————

      ライディングスクールによっては、同じパイロンスラロームコースを使って

      リーン的な曲がり方(一般的にイメージする リズミカルにバンクとスロットル操作を繰り返す走り方)と

      ターン的な曲がり方(歩くような速度で 車体を起こしたままハンドルを大きく切って曲がる走り方)を練習するところもあります。

      ちなみにターン的なスラローム走行のトレーニングメニューは「ちどり」と呼ばれるのが一般的です。

      ——————————————–

      バイクのカテゴリーによっては、ターン的な曲がり方とリーン的な曲がり方の「違い」を実感しにくいことがあります。

      前輪分布荷重が大きいスーパースポーツ系は「違い」が小さく(わかりにくく)、分布荷重が後輪寄りのクルーザー系(アメリカン系)は「違い」が出やすくなります。ネイキッド系はその中間です。

      いずれにしろ、路面状況が刻々と変わり、相手の意志を把握しにくい混合交通の中では、スピードやバンク角を抑えて「自分の身は自分で守る」ことが大切。それはまた「不用意に現れたお相手を傷付けない」ことにもつながります。

      万が一、交差点で転倒すると「滑走したバイクが歩行者に当たって怪我させる」ケースがありますし……

      立ちゴケ被害を最小限にとどめるために「スライダー」を装着していると、転倒時の「滑走スピード」が下がりにくく、歩行者や他車にぶつかったときの衝撃が大きくなってしまいますから……(僕自身が痛い目を見たことがあります)

      やっぱり街中の曲がり角は「クルリとスマート」にこなし、我々を見かけた歩行者や自転車が「バイクは危ない」「バイクは怖い」と感じないような走りを心がけることが大切だと思います。

      これは、僕がバイクに乗り始めた40年前に通っていたバイク屋さんの常連(限定解除ライダー)さんに諭されたことでもあります。

      当時の限定解除ライダーは「合格率1~3%の難関」を潜り抜けただけあって、「みんなの見本」という意識が強く、運転技術はもちろんマナーにも長けていました。クルマのドライバーを不安にさせたり、怒らせたりしない「スマートな抜き方」も見事でしたね。

      ——————————————————————-

      以上、頂戴したコメントについて、僕の考え方を説明させていただきました。

      不明点などがあれば、気軽に再コメントしてください。

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