
編集長時代に多かった質問は……誰のライテクが正しいんですか?
僕が編集長を務めていたバイク雑誌は、定期的にライテク特集を掲載していましたし、様々なプロライダーが一見、矛盾するようなことを言っていたので、読者のみなさんから こんな質問 をよくいただきました。
誰の言っていることが正しいんですか?
僕の答えは、いつもこうです。
缶コーヒーを思い浮かべてください。上から見れば丸、横から見れば長方形、色は黒……。
どこから見るかで、見え方は変わりますが、すべて缶コーヒーのことを説明していますよね。逆に言うと、様々な角度から眺めるからこそ、本質が立体的に浮かび上がってくるんです。

これで、たいていの方が納得してくださるので……もうひとつ、付け加えます。
「ライテク特集ページをめくりながら、今回の講師は、どんな観点から、何を伝えたいのかを考えてみてください。そして、それを感じ取ってみてください」と。
やっぱり、講師(プロライダー)のバイク遍歴や経験、体格によって「意識」するポイントが変わってきます。モトクロスで頂点を極めた方と、トライアルで頂点を極めた方と、ロードレースで頂点を極めた方とでは、どうしても視点(重視するポイント)が違ってくるわけです。
だからこそ、食わず嫌いをせずに「講師の真意」を読み取るようにしていると……あるときに開眼できるはずです。
「なんだ、結局、同じことを言っているんだな」って。
でも、理解のレベルは深く、立体的になっている。
考えてみれば、バイクの運動はニュートン物理学から逃れられませんから……表現やアプローチの仕方は違っても、バイクに「どのような力を及ぼすか」は一致していたりするわけです。
このあたりがわかってくると、応用力が一気に高まりますから、今まで苦手としていたこともできるようになってきますし、乗るのがどんどん楽しくなってきます。というわけで、今回のまとめです。
◎「奥義は何?」と自問自答して、その講師が一番伝えたいことを見極めてください。
◎素直にやってみて、その奥義を体験してみてください。
……「○か ×か?」 みたいな、裁判官のような気持ちで試すと、奥義にたどり着けません。素直に試して感じ取ってみてください。
◎やってみて、ピンと来なかったら、「ダメ」の烙印を押さずに、保留しておいてください。
……いつか、理解できるときが来るかもしれませんからね。
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