旧き良き日本が生きる宿『 雅叙苑 』

鹿児島・妙見温泉『雅叙苑』

行って初めてわかった「もてなし」の心

少し前に降り始めた小雨が体を冷やし始めた頃に、到着しました。
お宿の名前は「 忘れの里 雅叙苑 」(鹿児島県霧島市)


ホームページには「昨日を忘れる里といい、明日を忘れる里という。」と記されています。

気が付けば K2御一行様 はたくさんの笑顔に囲まれていました。しかも、それは営業スマイルではなく、真心のこもった笑顔!もう、これだけで心身が温まってきます。さらに、優しい声掛けやさりげない気配りに触れていると、こんな考えが浮かんできました。

「スタッフのひとりひとりが、感謝ともてなしの心で働いているんだろうな。お客さんとの距離感にしても、近づきすぎず、離れすぎず。ちょうど、親戚のおじさんが泊まりに来たときのような感じかな? 実はこのお宿、おもてなしというソフトウエアのほうがすごいのかもしれない」


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お部屋(今回は4棟の古民家に分宿)に案内されたら、一段とハートが温まりました。見てください、この葉っぱ! 

きっと毎日、心を込めて書き上げているんでしょうね。単なる演出ではないことが、スタッフの方たちの所作から伝わってきます。

お茶菓子にも驚かされました。

手作りのよもぎ団子で、餡はサツマイモ。ほのかな甘みから察すると、お砂糖は使っていないのでしょう。脱砂糖生活に切り替えて1年たつ僕でも食べれば食べるほど健康になるラーメン屋さんのご主人と知り合ったのがキッカケ)安心しておいしくいただけました。体が拒絶反応を示さない、天然の甘みはいいものです。

 

雅叙苑の夕食夕食は薩摩の郷土料理とかまど炊きのご飯でした。その印象を一言でいうなら「素朴ぜいたく」となるでしょう。フランス料理のような豪華食材を使うのではなく、野菜を中心に鶏、鮎、豚を組み合わせて、多様な味わいを楽しませてくれました。この料理の裏側にも、多大な手間と知恵が隠れているに違いありません。

後から知ったのは、野菜はすべて無農薬の自家栽培だったこと。そして、「大切な方がいらっしゃると、飼っていた鶏をつぶして、もてなした昔の風習」を再現したお料理だったということです。

まさしく、農家のごちそう! 鶏のお刺身をいただくときに、この背景を知っていたら、さらに味わいが深まっていたはずです。

朝食も、知恵と工夫でもてなそうとする料理の数々に、とても感心させられました。と同時に、ぶ=活力が生まれる食事だったと思います。

 

昔ながらの里山生活も動態保存?!

放し飼いの鶏僕は早起きなので、5時前からお散歩を楽しんでいると、スタッフの方が囲炉裏を手入れして新たな炭をおこしたり、かまどの準備を始めたり。その姿を拝見していたら、昭和40年代に母方の実家(稲作農家)で体験した農家生活が蘇ってきました。

昔は生きることそのものに、多くの手間がかかったものです。

でも、囲炉裏の灰を手入れしているうちに心が落ち着き、野菜を切ったり、かまどの火を整えたりしているうちに自然の恵みに感謝する気持ちが湧き上がってくる。結果的に、自分向き合う時間が、たくさんあったと想像します。

 

そういえば、先日、取材先の社長さんにこんな話をうかがいました。「ユダヤ教には週に1回、仕事をしない日があるんだって。このときに、自分の進みたい方向を見直すから、ユダヤ人は成功する確率が高い。特に、新しく描いた夢は、定期的に振り返らないと忘れてしまうからね」

こうした時間が自動的に組み込まれているのが、昔ながらの農家生活・里山生活。だから母方の実家を守る叔父さん夫婦は、70代を迎えて今なお健康で仲が良く、周囲に慕われ、笑顔で過ごしているのかもしれません。あの懐の深さは、自分と深く向かい合った人にしか醸し出せないものだと、この歳になって思います。

 

gajyoen-12ご一緒したみなさんは、どう感じたのでしょうか?

早朝の囲炉裏を囲みながら聞いてみると…… 本能を揺さぶる宿ですね。野生がそのまま残っている。ふと気が付くと、野良猫が鶏のひなを狙っていたりして……。あっ、この蜘蛛の巣は美しいなぁ」

こうした旧き良き農家生活・里山生活が「動態保存」されているのが 雅叙苑 の価値ですから、訪れたときには早起きしてスタッフのお仕事ぶりを拝見したり、いろんなお話を聞かせていただくことをおすすめします。

 

「日本をつなぐ」 存在になってほしい

出発前に、次代を担う若女将が見送ってくれたので、10分ほど立ち話しました。僕がどうしても聞きたかったのは、なぜ、このお宿を始めたのか? その理由です。

「創業したのは昭和46年。当時はビルが次々と立ち並び、古民家はどんどん壊されていました」

でも、古民家を残しておかなければいけない。いつか、日本の田舎の原風景を求められるときが来る。そう信じて、壊されようとする古民家を譲り受け、今の地に次々と移築してきたそうです。

「最初はお客さんが来ませんでした。馬鹿にもされましたね。だから、ずいぶんと貧乏が続きました」

お金がないから、食材は山のものと川のもの。食器とお箸は竹の手作り。あとは知恵と工夫です。確かに、おもてなしの心に、お金はいりません。クルーズトレイン「ななつ星in九州」のお宿に指定され、TV番組カンブリア宮殿」に取り上げられるほどの成功を収めている現在の姿からは、想像もつかない話です。その原点を大切にしているからこそ、いまだに竹の器なんですね。

「私の役目は、次代の 雅叙園 を創ることです。日々模索しています」

その言葉を聞いたときに浮かんだのが、息子の顔でした。ここに連れて来て、旧き良き里山生活を体験させたいと思ったんです。

gajyoen-10まず、息子に伝えたいのは「雨露をしのげて、ご飯とお味噌汁、おしんこをいただけ、家族みんなが笑顔で生きていけたら、もう幸せ」ということです。

「どんな逆境にあっても、明るく楽しく元気よく! そうすれば、必ず道は開かれる」と言い換えてもいいでしょう。

実際に、そうやって苦難の時期を乗り越えてきた若女将に、前を向く大切さを語ってほしいとお願いしました。

「本当ですね。笑顔で生きていくところから先は、すべて贅沢だと思っていれば、心豊かに生きていけるのではないでしょうか」

そして、若女将が子供のころに採ってお母さんに「今日のごはんにして」とねだった、よもぎや鮎を、息子たちと一緒に採ってほしい。現在は表に出さないようにしている、食材を採ってから料理にするまでの膨大な手間と知恵も、見せてあげてほしい。お客さんを迎えるための、心の通った準備も手伝わせてあげてほしい。こうした「手間」の中に、おもてなしの原点があると思うからです。

実際に訪ね、様々なサイトに上がっている口コミを見ると……多くの人が 「旧き良き日本らしさ」を取り戻したがっているように感じます。ただし、見ているだけでは物足りない。やってみたい。

そもそも里山暮らしの原体験がないと、このお宿が大切にしている「おもてなし」の意味がわからないかもしれません。だからこそ息子たちの世代に、今、原体験を提供したいんです。

その意味では、若いお嬢さんたちが「旧き良き里山料理や日本人らしいおもてなしの心」を体験する場として、何らかの講座を始めてほしいとも思います。目に見えない、心が温まるものこそ、手渡しが必要。「日本人らしい生き方」と向き合える場として、 これほどふさわしい場所はないのですから。

「考えてもみなかったお話ばかりです。大きなヒントになりました」

東京に戻る途中で浮かんだコンセプトは 日本をつなぐ~昔から今へ、そして次世代へ~
若女将につないでいってほしいのは、自然と共に生きる知恵やまごころ。感謝を抱いて日々を過ごす、腹の座った生きざまです。

そして、もうひとつ浮かびました。K2バイクトラベルの進む道です。
こちらは「日本をむすぶ」~すごい人・モノ・コトとの出会いを幾重にも~

はい、頑張ります。

 

まとめ

今回のツーリングで気付いたことをまとめておきます。

◎外から見えないところに、本当に大切なものが潜んでいる。つまり、行って自分で体験することに大きな価値がある。

◎ただ単にハードウエアを楽しんでいるだけだと、旅の面白さはまだ半分。なぜそうなっているのかに思いを馳せ、それを動かしている人間に会ってこそ、旅の新たな楽しみが開かれる。

◎古き良き日本の里山生活の知恵を、若い世代に伝えたい。そうしないと、自然と共に生きる感覚や感謝の念、おもてなしの心が廃れていってしまうような気がする。

というわけで、どんどんツーリングしてください。
そして、いつか 雅叙苑 を訪ねてみてください。

 

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