《試乗記》ディライト・スクランブラー‟カフェレーサー”

DUCATI スクランブラー カフェレーサー

※記事の内容や価格は掲載当時(2018年9月)のものです。
※最新の情報は、お手数でも、ご自身でご確認くださいませ。

えっ、空冷Lツインスポーツ、ないの?

結婚や子育てでやむなくバイクを離れていたアラフィフ世代が、次々とバイクに戻ってきています。子供たちが就職して、ようやく自分のためにお金を使えるようになったからです。

そんなリターンライダーが最初にチェックするのは、青春時代に「あこがれた」あるいは「いちばん楽しかった」バイクの、今の姿でしょう。1990年代後半に大ヒットした900SS(Super Sport)や900SL(Super Light)で「ドゥカティのとりこ」になった方なら、当然、最新の 900SS ということになります。

1996 Ducati 900SS

 ↑ 筆者は「初めての外車」として1996年に900SSを購入。ドゥカティの面白さにどっぷりとハマり、3万kmを走破しました。その後、916→996→748Rと乗り継いだのですが、お小遣いの減少とともに国産車へ(笑)。子供の大学卒業を迎えてドゥカティに復帰しようと思ったら……

「どれどれ」

ドゥカティジャパンのホームページを開いてみると……ありません! 空冷Lツインのスポーツバイクが。

「スーパースポーツ」という車名にひかれて正規ディーラーを訪ね、最新の937cc水冷4バルブLツインに試乗してみても……イメージと違います。もっとシンプルで、車両価格が安くて、普遍的なスタイリングのバイクがほしい。

いっそのこと90年代の900SSを中古で購入し、当時、盛り上がっていたサンデーレースB.O.T.T.(バトル・オブ・ザ・ツイン)の常勝マシンをモチーフにしたカスタマイズを施してみるか? いやいや、90年代のドゥカティはメンテナンスがたいへんだし、シリンダースタッドボルトが折れる恐れもある。純正パーツも出てこないだろうし……。

そんなふうに考えていたら見つけました、ディライト(DUCATI 鈴鹿)のコンプリートマシン CAFE RACER を。こんな手があったとはねぇ。

ディライト・スクランブラー・カフェレーサー

 ↑ ディライトオリジナルのコンプリートキットを組み込めば、スクランブラーがカフェレーサーに早変わり!

上写真のベースマシンはスクランブラー クラシック。そこに往年の900 Super Sport(1975~1982)を思い起こさせるロケットカウルを装着し、アルミたたき出しの燃料タンクを組み合わせたのがポイントです。

あえて燃料タンクの前後長を伸ばして、専用のシートとステップを組み合わせ、スポーティなライディングポジションを実現しています。伏せたときのカウルとの間合いもよく、ライダーをおおいに「その気」にさせてくれます。

[wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”]
ディライト・スクランブラー・カフェレーサー

 ↑ 今回の試乗車はレース参戦のためにフロントホイールを17インチ化、フロントブレーキをダブルディスク化、フロントフォークを正立化(国産ミドルクラスのノーマル品を流用)していました。

[/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”]
ducati 900 super sport desmo

 ↑ 俗に「ベベルの900SS」と呼ばれている1975~1982年型900 Super Sport Desmo。ディライトオリジナルのロケットカウルは、この名車を思い起こさせます。

[/wc_column] [/wc_row] [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”]
de"LIGHT Cafe Racer ライディングポジション

 ↑ またがった印象は、まさしく軽量・スリム・コンパクト! 上半身の前傾は案外ゆるく、ツーリングも苦になりません。身長170cm・体重65kgの筆者は足着き性もまったく不安なし。

[/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”]
de"LIGHT ducati scrambler custom

 ↑ 伏せたときの、スクリーン越しの視界も良好。カウルやスクリーンの建て付けがしっかりしていて、純正品のような仕上がりです。走行風によるバタつきやビビリ音は皆無。

[/wc_column] [/wc_row] [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”]
de"LIGHT scrumbler rocket cowl

 ↑ FRP黒ゲル仕上げのロケットカウル(6万3720円・銀部分はアルミ材)とスクリーン(2万250円)、ミラーセット(3万240円)を装着。ヘッドライトはスクランブラーのノーマル品を使えます。

[/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”]
ディライト DUCATI カスタムパーツ

 ↑ オリジナルのカウルステーキット(9万6120円)は造形が美しく、作りも精工。フレームにボルトオン装着でき(パーツも車体も無加工で装着でき)、配線やケーブル類を美しく取りまわせます。

[/wc_column] [/wc_row] [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”]
ディライト スクランブラー セパレートハンドル

 ↑ セパレートハンドル(6万2640円・クイックリリース式)はスポーツ性と快適性を両立する垂れ角10度の設定。バーエンドに装着したLEDウインカーセット(2万5920)の配線はハンドルバーの中を通せます。

[/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”]
ディライト スクランブラー メーターステー

 ↑ メーターステー(1万6200円)を装着すれば、適切な位置にメーターを移動でき、ノーマルのハンドルポストを取り外した後の穴も覆い隠せます。今回の試乗車はレース参戦に向けて改修中のため未装着。

[/wc_column] [/wc_row] [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”]
ディライト スクランブラー アルミタンク

 ↑ アルミタンク(26万4600円)は職人がたたき出したもので、年月を経るごとに増えていく磨き傷も味わいのひとつ。容量はノーマル比2リットル増の15.5リットル。ノーマルタンクキャップ対応(キーロック可能)、ノーマルシート使用不可。

[/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”]
ディライト スクランブラー シート

 ↑ リヤまわりはアルミタンク専用カフェレーサーシングルシート(5万2920円)とアルミサイドカバー(1万9440円)、フェンダーレスキット(2万4840円)、LEDリヤウインカー&ステーセット(1万6470円)で徹底的にコンパクト化。

[/wc_column] [/wc_row]

キビキビ、ダイレクト……求めていたのは、この感覚です!

走り始めた瞬間に「これだっ」と思いました。とにかく軽くてコンパクト! 国産600ccスーパースポーツよりもスリムで、凝縮感があります。

しかも水冷4バルブLツイン系と違って、トラスフレームが後部までしっかりと残されていますから、シートを通じて伝わってくる接地感がダイレクトでみずみずしいんです! これこそ90年代の900SSに通じる気持ちよさでしょう。

スロットルを開けたときの弾け感も程よく、バイクを右手で操る楽しみが濃厚です。最高出力が100psを超えてくると、実用的なスロットル開度はせいぜい10%以内。右手の扱い方も繊細にならざるを得ませんが、このスクランブラー・カフェレーサーならストレスフリー。右手の開け方や閉じ方で思い通りにトルクの出方やエンジンブレーキの働き方をコントロールでき、奥深い喜びにひたれます。

ドゥカティ スクランブラー カフェレーサー

特徴的なロケットカウルは裏面の処理まで美しく、純正品のようなクオリティが、まずうれしい。伏せずに走っているときには両腕の外側や肩に、それなりの走行風が当たりますが、伏せるほど、そして速度が増すほどに、ウインドプロテクション性が高まっていくのを実感できました。バイクを降りて、振り返った時のたたずまいにも……グッときます(笑)

試乗車はレース参戦のためにフロント17インチ化&ダブルディスク化、フロントフォークの正立化を進めていましたが……公道で遊ぶぶんにはシングルディスクで十分でしょう。ホイールもベースマシンのノーマル(フロント18/リヤ17インチ)でいいと思います。物足りなくなってからグレードアップしても遅くありません。

ドゥカティのLツインは、直4や並列ツインを積む一般的なバイクに比べて、エンジンの重心が後方にあるので、前後長を伸ばして着座位置を後ろ寄りに移したアルミタンクとの相性もバッチリです。ライダーのおへその下あたりに、ジャイロモーメントの主役であるクランクシャフトやクラッチが集中していますから、大きなアクションをしなくても「人車一体感」に浸れます。ロケットカウルが適度に前輪分布荷重を稼いでくれているのも好都合です。

おまけに、初心者を受け入れてくれる「優しさ」や「懐の深さ」が備わっていますから、初めてのスポーツバイクとしてもオススメできますし、ベテランライダーの最後のスポーツバイクにもいいでしょう。

空冷Lツインならではの冷却フィンの美しさにうっとりし、70年代の900SSに通じるスタイリングにニンマリし、90年代後半の900SSを彷彿させる軽快感とダイレクト感に胸を躍らせる。クルマの流れに乗ってクルーズしたときの、柔らかい鼓動感が心地いいのもドゥカティの美点です。

そう考えると……90年代後半の900SSで素敵な思い出をたくさん作ってきたライダーに、いま一番おすすめできるのが、このスクランブラーベースのカフェレーサー。

ノスタルジックな雰囲気を求めるならクラシックベースのスポークホイール仕様(冒頭の写真)、もう少し現代的な雰囲気を求めるならアイコンベースのキャストホイール仕様がいいと思います。いずれの場合も、ベースマシンを中古車にすれば、トータルの金額も納得できる範囲に収まるでしょう。

最新のスクランブラー カフェレーサーに、このロケットカウルとアルミタンクを装着するのも、賢い選択です。

 ↑ ディライトオリジナルのコンプリートキット(パーツ代合計78万5160円・マフラーはオプション)を組み込めば、あなただけのスクランブラー カフェレーサーが誕生します。

↑ ディライトオリジナルのコンプリートキット(パーツ代合計78万5160円・マフラーはオプション)を組み込めば、あなただけのスクランブラー カフェレーサーが誕生します。*ボルトオンキットとして販売されているので、遠方の方もあきらめずに、ディライトに相談を。

試乗車のキーを返却して、このバイクを眺めていたら……「人生経験を重ねたオトナのライダーにこそ、こうした奥の深いバイクを、カッコよく乗りこなしてもらいたいなぁ」との想いが浮かんできました。唯一の心配事は、息子さんが「ちょっと貸して」とディライト スクランブラー カフェレーサーを乗り回して、あなたに返してくれないことかもしれません。

まとめ……de”LIGHT SCRAMBLER CAFE RACER

★★★おすすめのポイント

◎軽量・スリム・コンパクト

◎何年も飽きないだろうロケットカウルとアルミタンクの造形

◎右手で軽快な車体を操る喜び

◎ダイレクトでみずみずしい接地感

◎見た目ほどつらくない上半身の前傾

◎時間をかけてカスタムを進めていく楽しみ

◎売却したくなったら、簡単にノーマルに戻せること

★★★気になったポイント

●タイヤの選択肢が狭いこと(ノーマルホイールの場合)

●荷物を積めないこと(防水デイパックを背負うのがベストでしょう)

●常にキレイにしておかないとカッコ悪いこと

★★★結論

90年代の 900SS と縁のあった方が、現代の DUCATI で当時のように遊びたいと思ったら、ディライトのカフェレーサーがベストチョイスです。手に吸い付くようなアルミタンクの感触、懐かしくも新しいスタイリング、空冷Lツインの開放的なパワーフィールが、きっとあなたを一生楽しませてくれるでしょう。隣にどんな高級車が並んでも、愛車を誇らしく思えますしね。


取材協力:de”LIGHT (DUCATI 鈴鹿) http://www.delight-suzuka.co.jp/


Report&Photo……梶 浩之:フリーランスジャーナリスト・バイクの家庭教師・二輪車安全運転指導員・自動車技術会正会員・K2 Bike TRAVEL代表。1994年に大型バイク専門誌が創刊したときのメンバーのひとり。2005年4月号から同誌編集長。一貫してニューモデル試乗記やライテク特集を担当。2012年1月に独立して各誌に寄稿中。記事執筆のために試乗した車両は800台以上。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください